看護師アニキの”裏”看護

精神科病棟からの脱走!あり得ない方法で逃げ出したアル中患者の話

 

久しぶりの更新となりました看護師アニキの”裏”看護シリーズ

過去のお話はこちらからご覧ください。

https://takaburo.com/category/nurse

看護師アニキシリーズでは、普段わたしたちが普通に生活している中で知ることのできない、看護業界の裏側を友人の看護師歴20年の大ベテランである”アニキ”が語るコンテンツとなっております。

お化け的な話から、リアルな介助の話まで、どれも読み応え抜群ですので、ぜひ興味のある方は上のリンクからご一読ください。

 

今回は記事タイトルにもある通り、「精神科病棟から脱走したアルコール依存症患者の話」をしていきたいと思います。

インターネッツで「精神科 脱走」と検索すると、なかなかおもしろい興味深い話がちらほらヒットします。

閉鎖病棟から脱走した話

こちらの記事は、ご本人が実際に脱走した際の写真をSNSでアップしていて、非常にリアルでワクワクしました。(不謹慎of不謹慎)

読み終わった後に妙なテンションになってしまったわたくし、さっそく友人である看護師アニキに連絡しまして、「脱走話ってないの?」と尋ねたところ、彼はあっさり「あるよ」と某バーテンダーのモノマネで応えてくれました。

期待に胸と股間(?)を膨らませて聞いたんですけど、これがほ・ん・と・うに!マジで!あり得ない方法で脱走した話だったんですよ!

 

…前振りが長いですね。

これ以上お待たせするのもアレなので、さっそく本題に移りましょう!


精神科病棟から脱走したアル中患者のあり得ない逃亡劇

 

最初にお伝えしておきますが、今からお話するのは、アニキ本人の実体験ではありません。

彼のおばあちゃんの体験談です。

というのもアニキのおばあちゃんは、おどろくことにアニキと同じ病院に勤めていた大先輩看護師だったそうで(アニキの病院は昭和40年代からある老舗)、経験豊富が故に、たくさんのおもしろエピソードを持っているとのことでした。

その中でも一番インパクトがあって、おもしろかったのでよく覚えていると、アニキは言っていました。

 

 

時はさかのぼること40年前。

まだわたしも看護師アニキも生まれていなかった昭和50年代前半頃のお話で、雪が深々と積もる真冬の北海道で起きた事件です。

 

 

当時の精神科は非常に雑な管理体制だったらしく、アルコール依存や精神遅滞、統合失調症などの精神的な病をすべてごちゃ混ぜにしていたそうです。

現代ならあっという間に問題視されそうな話ではありますが、当時はそれがまかり通っていたっていうんですから、入院を余儀なくされた患者さんたちは大変だったでしょうね…

 

そんな中、ある1人の男性アルコール依存患者が脱走を企てます。

ここでは仮にAさん(アル中なので(笑))としましょうか。

 

ちなみに、通常精神科病棟は閉鎖病棟であることが多く(いやマストか?)、患者さんの身の安全を保障するために出入り口は24時間施錠、フルタイムで看護師が目を光らせて監視しています。

これだけ聞くとめちゃくちゃ窮屈な環境だなって思われるかもしれませんけど、アニキ曰く、「病気の自覚がない患者さんや、統合失調症でひどい妄想状態にある患者さんが勝手に外に出ていくのを防ぐためだから、仕方がない」とのことでした。

 

話を聞くだけでも、まるで監獄のような精神科病棟。

普通に考えたら脱走するのってほぼ不可能ですよね?

でもこのAさん、あるとんでもない方法で脱走しちゃいます。

いったいどんな方法だと思いますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実は、 トイレ から脱走したんです。

 

もちろん窓からじゃないですよ?

汲み取り式便器の中からなんです…

 

 

これ、普通に考えてあり得なくないですか?^^;

どんだけお酒飲みたかったのか、精神科病棟が苦しかったのかわかりませんけど、よほど切羽詰まってない限り、糞尿でいっぱいになってる便器の中に飛び込もうって発想にはなりません。

それでもAさんはトイレを選んだわけですから、人間って覚悟があればなんでもできるんだなぁと、わたしは逆に感心しました(笑)

どうやって汲み取り式便器から脱走したのか

 

ここからは、Aさんがどうやって汲み取り式便器から脱走したのか、その手法を徹底解説していきます。

やや汚い話しになるので、そういうのが苦手だという方は閲覧注意ですぞ。

 

精神科に罹っている患者さんということで、自分の意思で行動できないイメージがどうしても強くなりがちですが、Aさんの場合、アルコール依存なのでうつ病や統合失調症の患者さんに比べると比較的普通の方に違い状態です。

つまり、限りなく自分の意思で行動できる病状であり、思考能力もそこまで低下していなかったことが推測できます。

このことから、勢いだけで行った脱走劇ではなくて、計画的逃亡だったと言えるでしょう。

上記を踏まえて、当日のAさんの行動を洗っていきます。

①日中のケアやレクを無難にこなし、監視の目が緩む深夜まで待機

②念入りに様子をうかがい、いざトイレへ

③兼ねてからの計画通り、便器の穴に飛び込み、う〇この海を泳いで脱走

④そのまま逃げ切り、脱走成功^^

御覧の通り、実に無駄のない、迅速かつ正確な脱走と言えますね。

ただ、これだけ読むと、2点ほど疑問に思う個所があるかと思います。

1.便器の中からどうやって外に出たのか
2.出れたとしても、う〇こまみれでどうやって逃げたのか

それぞれ、深堀して真実を暴いていきましょう。

1.便期の中からどうやって外に出たのか

 

まず、最大の謎として、便器の中からどうやって外に出たのかが気になりますよね。

答えは非常にシンプルです。

今の若い方はあまり見たことがないかもしれませんが、昭和50年代の田舎は、まだまだ汲み取り式トイレこと通称「ぼっとん便所(糞尿が直接穴に落ちていく擬音がそのままネーミングとして採用)」が多く、水洗トイレは決して多くはありませんでした。

わたしも祖母の家がぼっとん便所だったんですけど、底が見えない、まるでブラックホールのような吸い込み口がとても怖かったのを今でも覚えています。

話が逸れました。

そんな汲み取り式便所君、システムとしては、便器の下に糞尿を貯めておき、貯まったら業者が専用の汲み取り車で、外にある汲み取り槽からパイプを突っ込んで回収するというもの。

もうお分かりですね?

つまり、ぼっとん便所は、かならず外とつながっているわけです。

力説するほどの話しではありませんけど、昭和の人間ならだれでも知っている常識でして、脱走しようと思えばだれでもできた話なんですよ。

ただ、あまりにもリスクとデメリットが豊富過ぎてだれもやらないってだけ^^;

中でも最大のリスクが、死の危険性があるということ。

というのも、汲み取り式トイレの貯水槽(貯水槽って言うのかな?便槽?う〇こが貯まるところ)は、メタンガスが充満しています。

このメタンガス先生、あまり嗅ぎすぎると中毒死を起こす、とても危険なガスなんですよ。

実際に死亡例も起きていて、ほんとうに怖いです。

ソース:https://www.j-cast.com/2013/07/14179405.html

まぁ、このことをAさんが知っていたかどうかはわかりませんが、そういった意味でもよほどの渇望があったんだなぁと、ほんと感心しますね。

2.う〇こまみれでどうやって逃げたのか

汲み取り式トイレが外とつながっていることは理解できたと思いますが、一番まずいのは100%う〇こまみれになることです。

仮に脱走できたとしても、全身う〇こだらけの姿を誰かに見られたら即通報されるのは目に見えています。

でも大丈夫。

Aさんの用意周到さは半端ではなく、着替えをビニール袋に入れて準備をしていたんです。

これならう〇こまみれになったったところで着替えれば良いだけですし、臭いはごまかせないにしても、遠目から見る分にはう〇この海を泳いできたとは思われませんよね^^

さらに、脱走した時間帯も深夜を狙っての犯行ですから、バレにくさも倍増と、ほんとうに精神科に罹る必要があるのか?ってくらい、キレッキレです。

以上のことから、Aさんはなんなく脱走を成功させてしまうわけですよ。

Aさんがガチで用意周到だと思ったのはこれ

いや、ちょっと待て!汲み取り槽は、鉄の重たい蓋で上から閉められてるはずだし、下から昇るにも出口が狭いはず!

 

もしかしたら、勘の鋭い人ならこんな風に思ってるかもしれませんね。

おっしゃる通りで、たしかに外にある汲み取り槽は、臭いが外に漏れださないように重くて頑丈な鉄製の蓋がされていますし、下から這い出すにも穴が回収用のホースが入る程度の大きさしかないので、出るのもそう容易な話ではありません。

さらに、北海道の真冬で起きた事件ですから、外にはたくさんの雪が積もっており、とても人間の力では下から蓋を開けることは不可能な状態。

なのに、Aさんはいとも容易く脱走しています。

一体どのようなからくりなのでしょうか。

わたしがアニキからこの話を聞いたときに思わず「へぇー」と言ってしまったのがこの部分で、Aさんは予めある”細工”を汲み取り槽にしておいたんです。

その”細工”とは、シンプルに「汲み取り槽をぶっ壊す☆」でした。

Aさんが汲み取り槽をぶっ壊せた理由

 

「閉鎖病棟に入院していた患者なのに、なぜ外にある汲み取り槽を壊せたのか」って話ですけど、ある程度病状の軽いAさんは、病院側から日中に軽作業を頼まれることが多かったようで、この日は外の雪かきを任されていました。

兼ねてから脱走計画を考えていたであろうAさん、もちろん向かうは汲み取り槽です。

手にはおあつらえ向きに鉄製のスコップが!

きっと大はしゃぎで汲み取り槽に積もった雪を跳ね飛ばし、蓋を持ち上げ、通るには狭すぎる穴を拡張したことでしょう。

ただ、ぶっ壊したままだと、万が一だれかが発見した場合に大ごとになってしまい、脱走計画に支障をきたすかもしれませんよね。

ここでもAさんの脳みそがフル回転しまして、どこからかコンパネを拾ってきて、破壊した汲み取り槽の上に載せました。

さ・ら・に

雪をふわっと(あくまでも軽く)コンパネの上に乗せておき、あやしまれないようにカモフラージュしたんです!

よくもまぁ、ここまで冷静かつ用意周到に準備ができたもんだなと。

なんだったら、日中でも外に出られるわけですから、その時点で脱走しちゃえばいいのにって、わたしは思いました。

でもアニキ曰く、「日中は監視の目がいつも以上にきびしいから、仮に脱走できたとしてもすぐに見つかるし、連れ戻される確率が高くなるだけだよ」とのことです。

まぁ、それはそうか。

だれだって考え付くことだから、その分成功率は低くなるのは当然ですよね。

わたしは脱走には向いていないことが分かったと同時に、Aさんがよく我慢して計画を実行したなと、また1つ感心してしまいました。

こうしてAさんの脱走は成功した

やや雑な部分もありましたが、少ない手数と手段を持って、Aさんの脱走計画は無事に(?)成功となりました。

振り返ってみると「すごい」の一言ですね。

・事前に脱走経路を確保
・だれも思いつかない汲み取り式トイレを採用する意外性
・脱走後のことも考えて着替えを用意

よくもまぁ、病院の中でここまでの計画を練れたものです。

監視していた看護師さんたちも、さぞかし度肝を抜かれたことでしょう。

わたしなら「マジでえええええ」って絶叫してますね(笑)


精神科病棟を脱走した後のAさんについて

凄まじい執念で脱走したAさん、結局どうなったか気になりませんか?

ということで、簡単にAさんのその後についてお話していきますね。

 

脱走後のAさん、無事に誰からも見つかることなく、なんなく自宅への帰還に成功します。

 

これ、ちょっと想像してみてください。

時刻は真夜中…辺りは雪の降る音に支配された静かな田舎町…

家族が寝静まった中、突如鳴り響くインターフォン…

「ピーン・・・ポーン・・・」

(こんな夜中に誰だろう…いいや、めんどうだし放っておこう)

そんな住人の思惑を無視するかの如く鳴り続けるインターフォン…

「ピーン・・・ポーン・・・」

「ピーン・・・ポーン・・・」

(もう!しつこいなぁ!)

あまりのしつこさに苛立ちを覚えると同時に、別の考えがふと脳裏をよぎります。

(これだけしつこいってことは、誰かが急な用事で訪ねてきたのかも…)

万が一のことを考えて玄関へと赴く家族…

そして…

「・・・はい(ガチャっ)」

「よっ!」

「ぎゃああああああ」

 

ですよ(笑)

いや、絶対こうなりますって。

だって、入院しているはずの家族が、なんの前触れもなしに帰ってくるんですよ?

しかも夜中だし、臭いしで、ほぼお化けと変わらないじゃないですか。

昭和後期の話しなので、当然カメラ付きのインターフォンではなかったでしょうし、ドアを開けるまで誰かわからないわけですから、開けた途端にいるはずのない人物が立っていたら、そりゃあ絶叫もしますよ。

…完全に余談ですね。

 

とまぁ、なんやんかんやと帰宅したAさんですが、普通なら家族の説得で病院に戻されるところ、なぜか堂々と自宅に居座ります。

なぜなんだぜとアニキに尋ねたところ、「多分だけど、Aさんはもともとアルコール依存ということもあって、家族に暴力を振るっていたんじゃないかな。だから家族も怖くて病院に連絡できなかったんじゃないか?」とのことでした。

そりゃあ暴力を振るう人から脅されたら、従うしかないですよね。

過去に暴力があったなら当時の恐怖を思い出すでしょうから、尚更のことです。(アニキの予想なので、真実は定かではありません)

わたしとしては、Aさんが話す病院生活があまりにもひどかったので、家族が同情して匿った説もあるのかなって、思います。

今となっては真実は闇の中ですが…

 

なんやかんやと元の幸せな生活を取り戻したAさんでしたが、そんなウキウキ生活もそう長くは続かず、突如として終わりを告げます。

なんと、お酒を買いに自宅を出たところ、辺りを捜索していた看護師さんに発見され、捕まってしまったんです!

 

考えてみたらわかることですけど、脱走して行き着く先なんて自宅に決まってますし、お金もなにも持ってない状態ではそう遠くへ行けませんから、自然と選択肢は限られるんですよね(笑)

当然看護師さんたちも自宅周辺を探すに決まってますわ。

 

こんな感じで、ものすごくあっさりとAさんの華麗で緻密な脱走劇は幕を下ろしました。

その後のAさんがどうなったかはわかりませんが、この一件で懲りて、ちゃーんとアルコール依存と向き合って治療に専念してくれてたらいいですね。


精神科看護師視点から見た脱走劇の裏側

ここからはやや余談になってしまいますが、お時間のある方はぜひ読んでみてください。

 

アニキは、「この事件には実は裏側があるんだよ」と言っていました。

「裏側!?」と思わず聞き返したわたくし、めちゃくちゃ興味があります!

 

アニキ「Aさんの脱走、あまりにもうまく行き過ぎだと思わないか?」

わたし「まぁ・・・言われてみればそうかも…(話がきれいにまとまり過ぎてて、まったく思わんかったわ)」

アニキ「少なくとも夜勤の看護師が目を光らせていたわけだし、夜中にトイレに行くのだって基本的には患者1人で行くのは不可能だ。」

アニキ「もっと言えば、そんなタイミングよく除雪を任されると思うか?患者さんはAさんだけじゃないんだぞ?」

わたし「つまり、Aさんが他の患者さんに頼み込んで、当番を変わってもらった…?」

アニキ「そう考えるとどうしたって共犯というか、手伝いが必要になってくるよな?」

アニキ「んで、俺はばあちゃんに聞いてみたんよ。共犯者いなかった?って。」

アニキ「当時の病院側も俺と同じように考えたらしく、患者さん1人1人に問いてみたところ、数名が手伝ったったて、はっきり答えたそうだよ。」

わたし「マジかぁ…でも、なんでそんな危険なことを、あっさりと手伝ったんだろ?」

アニキ「その理由が、アメをくれたから、だってさ。」

わたし「アメ!?たったそれだけで?」

アニキ「ここからは少し専門的な話になるけど、アルコール依存は、統合失調症や精神遅滞に比べると普通の人に近い状態だ。」

アニキ「言ってしまえば、患者たちの中には目に見えないピラミッド状のヒエラルキー(階級)が存在していて、Aさんはその頂点に君臨していたわけだな。」

アニキ「そんな人から協力を求められたら、善悪の判断がつかない患者さんたちは喜んでアメ1つで助けるだろうさ…

 

 

正直、わたしはこの話を聞いて身震いするくらいの恐怖を感じました。

正常な判断がつかない仲間を相手に、うまく言いくるめて協力させる…

極端な話、もっと危ないことだってやらせることができるわけですから、これほど恐ろしい話はありません。

往々にして、こういう危険なことが日々精神科内で起きているのかまではわたしにはわかりません。

ただ、入院されている患者さんたちは、毎日必死に自分の病気と向き合って、真剣に治そうと戦っているわけですから、できることなら私利私欲のためにそういう患者さんを巻き込まないでほしいなと思いました。

 

少しショッキングなオチとなってしまいましたが、以上で今回のアルコール依存患者であるAさんの脱走劇は終わりとなります。

今後も看護師アニキの”裏”看護は続きますので、ぜひ冒頭で紹介したURLをブックマークしていただいて、楽しみにお待ちいただけたらと思います!

ではまた次回のお話でお会いしましょう!

ABOUT ME
うす毛のおっさん
30歳を過ぎたあたりから「あれ?おまえアタマやばくね?」と周りから言われるようになりました。 最初は「え!マジで!?」みたいな大きなリアクションをとっていましたが、今ではノーリアクション! うす毛なんか気にしない!・・・つもり Twitter始めたので気軽にフォローお願いします。@usugeburoger